症例・治療紹介

適応症を広げる改良型遊離歯肉移植術の考察(術式)

①浸潤麻酔と切開・剥離

切開は付着歯肉があるならその直下でするより一部、角化歯肉を含むように切開線を入れる。付着歯肉がないケースなら歯肉溝から骨膜上にブレードを沿わせ一方向に引きながら切開を進める。
これはFGGと同じである。
歯槽粘膜上皮のフラップは弾性繊維のため剥離、切開を進めた量ほど余ってこないが厚みとして残る。通常のFGGの場合、切開剥離した上皮はそのまま置いておくか余分な上皮は切除するがM-FGGの場合この余分な上皮を有効に利用していく。



②受容床の形成と歯槽粘膜上皮の縫合

M-FGGの場合、切開剥離して出来た歯槽粘膜上皮のフラップを切開部最下低の骨膜と縫合する。
これは血管に富む歯槽粘膜の創面を既存の歯槽粘膜上皮により閉じることで移植片を治癒時に包含されることを有効に防ぐ。

受容床は出来るだけ均一にする。このときの均一というのはあまり厚いところは残さないことと薄くしすぎてパーフォレーションしたところは意識して受容床を切り足して幅を取って行くことである。頬粘膜を十分動かして動かないことを確認する。
もし動くようであれば切開が足りないか、もしくは最下低部の切開が浅いことが考えられる。受容床が動かなくなるまでしっかり減張の切開剥離を行う。受容床が動くと移植片はうまく生着しない。

受容床の最下低部の骨膜から針を通し歯槽粘膜上皮のフラップ上端とマットレス縫合していく。疎な弾性繊維のため縫合のテンションはかかりやすく骨膜を断裂しない程度に緊密に縫合する。あまりに歯槽粘膜の厚みがある場合、電気メスのO字型かU字型のチップで歯槽粘膜創面の中を削ぎとって予め厚みを減じる。これにより治癒後の歯槽粘膜部のボリュームを調整する。この処置の場合の電気メスによる焼灼切除は歯槽粘膜部の治癒に関係しない。

縫合が完了すれば再度、頬粘膜を動かして受容床が動かないことを確認する。動く場合はもう少し減張のための切開を加えていく。

移植片を採取する前に当該部位周囲の歯周組織をよく確認しておき、骨外科処置等は採取以前に行う。



③移植片採取とその縫合

移植片採取は通常のFGGと同じである。縫合はまず位置決めに移植片を近遠心で縫合固定し、骨膜からマットレス縫合で固定する。頬粘膜を動かし移植片が動かないことを再度確認する。移植片が動くと生着に問題が起こる。



④歯周パックはしなくていい。

歯槽粘膜上皮を骨膜と縫合し創面を残さないようにするため、フィブリン網が移植片に付着し包含治癒されることを有効に防ぐ。M-FGGの治癒として熟成、角化が始まるまで移植片を採取時のまま、もしくは移植完了時に近い寸法で立体的に残していける。歯槽粘膜フラップに包含治癒されることはなく別個の治癒となる。大部分の創面が縫合閉塞されているため若干残る創面であっても歯周パックを必要としない。基本的に電気メスやレーザーによる創面の焼灼処置も必要としない。



⑤抜糸

縫合糸は歯周パックをしないため適切に観察できる。通常の抜糸と同様でいい。わたしの場合7~10日程度である。このころになると縫合された歯槽粘膜上皮と移植片は骨膜と接合治癒している。特に栄養血管の豊富な歯槽粘膜上皮の治癒は迅速で何も問題を呈さない。後は移植片の治癒熟成を待つ。



⑥ブラッシング

移植部のブラッシングは移植片の剥がれ落ちた上皮が再生され角化して若干の白味を帯びてきたらソフトブラシではじめる。2週を越えたあたりで再生がみられ3週頃から角化がおきてくるからこのあたりからであるが、視覚的治癒に照らし合わせてきめていく。



頬側にほとんど付着歯肉を持たない天然歯、もしくはほとんど角化歯肉を持たないインプラントである。
部位的に見て困難なものは歯槽粘膜の受容床作成時、創面が断面として厚くなるものが多い。

一番多く目にする受容床の作製である。
ほとんどの場合このままで移植片を縫合していき、それを歯周パックで押さえ込み治癒を待つ。歯槽粘膜部の治癒後も圧迫され包含されやすい形で治癒していく。A,Bの幅が厚くフィブリン網に移植片が覆われやすい。治癒とも不安定になりやすい。

余計な歯槽粘膜のフラップを切除し移植片を縫合したものであるが、これも歯槽粘膜断面の厚みは変わらない。
歯周パックにより見かけ上の治癒をみるが、やはり包含されやすく予後に不安を残す。歯槽粘膜は血管に富み上皮が剥離した角化歯肉にフィブリン網を伸ばし取り込もうとする。

M-FGGの場合歯槽粘膜上皮を縫合し移植片を別個に治癒させることができる。

A,Bが縫合された歯槽粘膜は驚くほどの早さで移植片との境目をもって治癒していくし、歯槽粘膜からのフィブリン網もでてはこない。歯槽粘膜創面内面の肉芽を前もって切除すれば歯槽粘膜の治癒後の厚みも調整できる。