症例・治療紹介

適応症を広げる改良型遊離歯肉移植術の考察(要約)

この手法は今までの遊離歯肉移植術を必要としながら部位的な難症例で施術しても乏しい効果しか得られなかったか、もしくは効果が無かったような症例に対しても有効な改良型の遊離歯肉移植術を開発したので報告する。
遊離歯肉移植術では移植片が生着し、それを機能させる事により安定した角化歯肉の獲得を期待していた。
しかしながら移植片の生着後に機能させることは部位や歯肉の形態により困難なことが多かった。


そこでこれを実現するため歯槽粘膜や頬粘膜の血管に富んだ弾性繊維の結合組織を先に縫合固定し余計な創面を先に閉じることによって生着させた移植片を別個に治癒させ、歯槽粘膜部に包含されることを防ぐのである。
今までの遊離歯肉移植術“Free gingival graft”(以下FGG)の適応症はもちろん、難症例であった付着歯肉を持たない天然歯や修復歯、それに全く角化歯肉を持たないインプラントまで改良型-遊離歯肉移植術“Modified-Free gingival graft” (以下M-FGG又はK-M-FGG)は安全に歯肉移植術を成功させることが可能である。
そして今までの困難部位に関してM-FGGは生着した移植片が治癒後、移動をおこし難い、歯周パックを必要としないなどの利点も併せ持つ。



もはや付着歯肉の必要性について衆人の知るところである。
特に歯周病やインプラントに関心を持ち始めると歯頚部付近の角化歯肉で出来ている付着歯肉が気に掛かるし歯槽粘膜や角化歯肉との違いも理解出来てくる。多くの先生方は手を拱いているだけでなく不満を持つ角化歯肉や付着歯肉を自分自身で何とかしようと各種の歯周外科処置を行おうとしFGGはその中のひとつの手法である。


FGGは不足した付着歯肉や角化歯肉、不要に張り出した歯槽粘膜に対して予知性が高い術式である。
しかし本当に上手くいって欲しい、問題になる口腔前庭が極端に浅いかまたは無いような困難な部位に対しての成功率は移植片が生着しなかったことを除いても本当に低いのが現実である。


これは移植片が生着した後、歯槽粘膜上皮に包含されて治癒してしまい視覚的には全くもとの状態に戻って期待したほどの成果を見ないと言った問題である。
原因として考えられるのは治癒過程において剥離した移植片の上皮と、分厚い創面を残した歯槽粘膜が圧接され包含治癒すると考えられる。このような困難な部位には歯周パックの効果は期待できない。


骨膜床と移植片の間には毛細血管が新生し血流が再現し生着が始まる。一方では受容床のために切開形成された治癒途中の歯槽粘膜の表皮は上皮の剥離をおこした移植片に触れると血流に富んだ歯槽粘膜側からのフィブリン網が覆ってくる。術部位として創面同士を圧迫している様相を呈する。


M-FGGでは受容床の下部に、前もって血管に富む歯槽粘膜を骨膜縫合することにより移植片を単独に治癒させていくのである。歯槽粘膜側からのフィブリン網が出てこないため歯周パックを必要としない。
これはこの手法を理解し行う上で重要なポイントとなる 


そして縫合治癒させた弾性の強い歯槽粘膜が移植片を押し上げるため治癒後の位置移動が起こりにくい。
これは口腔前庭がある程度の高さを持つようなケースに歯肉移植術を行ったときにおきる治癒後の位置移動を有効に阻止できる。